――…その頃の宮殿。執務室にて
カチッ、カチッ、カチッ
耳に入る秒針の音が妙に気になる……
ゼロはペンを走らせながら書類と時計を交互に見る
その様子を近くで見ているゾノには彼の行動の意味がわかっていた
それはほんの数分前のこと
めったに城内を出歩かないシェゾが、ここに来たことがすべての始まり
「だめかい陛下?」
突然現れたと思いきや、リュリュカと出かけたいと言い始めたのだ
「当たり前だ」
「なぜ?陛下は彼女を愛しているからかな」
「ふっ、愚問だな。愛だの馬鹿馬鹿しい」
「なら構わないはずだよね」
違うかい?と目で語るシェゾに対し、ゼロは相手を見ることなく淡々と仕事をこなしていく
「だがあいつは俺の妻だ。貴様が触れていい奴ではない」
「それは矛盾していないかな。愛していない。でも自分以外には触れさせない。僕には陛下が彼女にとても心惹かれているようにしか見えないのだけどね」

