《ピーンポーン…》
よし!
これで乱れ髪が直った。
私は顔をそむけながら玄関を開けた。
だって恥ずかしいもん。
口の悪い私が浴衣着るなんて。
『おぉ!去年よりスゲー可愛い』
悠緋には毎年、浴衣姿を見せていた。
見せたくなくても、浴衣が着たかったから。
「はいはい、お世辞ありがとぉ」
可愛いわけないじゃん。
私なんか…────
“可愛い”なんて言われた事、悠緋くらいしかないし。
『お世辞じゃねぇっつの。
なぁ瞬夜?』
瞬夜は私をちらりと見た。
絶対心の中で笑ってる。
浴衣なんて着るんじゃなかった。
『あぁ、似合ってる』
「本当?」
『うん』
嬉しい。
悠緋に言われるより数倍嬉しいのは何故?