こんだけの爆音兵器を店の真ん中には置けない。
 どうにかして店の一角へ集めたいのだが、兵器人間にも人格がある。
 フツーの客と同様にどの席が良いか希望を言う。
 眠れる席=座敷タイプの席。
 ウチの店だと、偶然にもフロアの中央寄りのエリアにある席。
 ムリムリムリムリムリムリ。
 中央に爆弾四個抱えて営業できるほど、ぼくら時給高くないから、いやマジで。
 でも、席指定されたら断れないし、あーもう終わった~、みたいな。


 ぼくが入社する前の話。
 ベテランのバイトが、四天王をフロアの四方に一人ずつ座らせることに成功したそうだ。
 それはすごいスキルだと思う。
 ただ、結果的には、四方からいびきが響き渡ることで、激しい相乗効果となり、客のほとんどが帰ってしまったとか。
 帰った客の一人が、会計時にスタッフへ苦情交じりに言った「東西南北、いびきの四天王か」が『爆音四天王』の由来となった。


 とまあ、こんな『爆音四天王』みたいな客は、出入り禁止にすればいいと、多くの人は思うだろう。
 ぼくもそう思った。
 でも、現実はなかなか難しいらしい。
 というのも、いびきのような生理現象あるいは病気の症状を理由に、入店を拒むことは差別につながるそうだ。
 睡眠時無呼吸症候群という病気が原因で、大きないびきをかくんだって。
 だから、いびきで入店拒否することは病人を差別するようなモンだと。
 こういう話を聞くと、『爆音四天王』に少し同情する。
 そうだよね、病気じゃあ、しょうがないじゃないか……。