大学生はなんでこんなに上から目線なんだろ?
 上からっていうか、むしろ『神』目線?
『お客様は神様です』って昔の演歌歌手が歌ってた。
 大学の講義や一般教養でカスタマーサービスについて軽く勉強する。
 昔の演歌はともかく、後者は大学生なら知ってるはずだけど、自分がバイトとはいえ接客業をしているって自覚がないんだろう。

 
 というぼくだって、去年までは似たようなもんだった。
 就職に失敗するまでは。

 就職も決まらないまま大学からポンと社会に押し出されて、「はい、今日からキミはフリーターね」と烙印を押された。
 バイトしてなければフリーターでもない、ただの無職。
 親がまだ働いているから実家に寄生できる。
 それがなければ、ぼくだって卒業と同時にネカフェ難民だったかもしれない。
 いや、貯金も仕事もなかったから、ネカフェ代が支払えずにネカフェ難民にさえなれなかっただろう。
 ネカフェでバイトするようになって、それを痛感した。
 同僚の大学生バイトは、そーゆーのがまだわかんないんだろうな。
『神』目線のおまえと、おまえがいじって嘲笑っているネカフェ難民とは、『神』じゃなく『紙』一重だということを。

 ……うん、うまいこと言おうとするとやっぱダメだ。
 こーゆーのがウマくできれば、就職も失敗しなかったかも知れないな~。


 でも、悪いことばかりじゃない。
 お陰で、ネカフェ難民を見下さず、偏見を持たず、逆に親近感を持てるようになった。
 そして、興味を持つようになった。
 興味の対象は、ネカフェ難民だけではなく、他の風変わりな客にまで及んだ。
 
 
 奇人で変人で奇天烈な、愛すべきネカフェの懲りない面々。