山田のことを気に入るやつがいてもおかしくないのに、ひどくショックを受けている自分がいた。

武内たちだけじゃない。
きっと山田を好きになるやつは今後もたくさん出てくる。

たとえ山田がその中の誰かを選んだとして、俺はそれを見てることしかできない。

何もしないのを選んだのは俺自身だ。

「でもあいつ、美術の手嶋とデキてんだろ?」

武内が残念そうにつぶやく。
その噂が生徒にも広がっていることに驚いた。

「それは…」

ただの噂だと言おうとしたとき、

「違うよ。山田の片思いだろ」

手嶋が相手にするかよ、と宮下が付け足した。