「君は……?」 そう発するのが限界で、僕は彼女を見つめた。 彼女は赤い唇を動かす。 「リリス」 その響きに、僕は何故か、ひどく懐かしい気持ちになった。 「リリス……」 名を呼べば、彼女は嬉しそうに笑った。 「ずっと待ってたの。きっと来てくれるって、信じてた」 リリスは僕の胸に頬を寄せた。 慈しむように、愛おしいように。 不思議と、僕自身も初対面である彼女に愛しさに似た感情をおぼえた。