きっと先輩は、あの時も、そして今も、何かを抱えていたんだ。

一人でずっと、どれくらい苦しんできたんだろう。

なのに俺は、何も知らずに...

『好き。』

俺が、あんなこと言ったから...先輩を余計に苦しめた。

今、先輩を苦しめているのは、俺なんだ。

「なんで...あんなこと言ったんだよ...」

先輩が俺の前から居なくなって、どれくらいたっただろう。

いや、実際はそんなに経っていないんだろうけどさ。

あの日から、俺の中の時間が止まってしまったんだ。

なのになんで...なんで、あんたがここに居るんだよ。

いつものように部室に来た俺は、いつものように先輩のことを考えていた。

『イギリスに、行くんです。』

もしかしたらもう二度と、あんたには会えないんじゃないか。

そんな不安が、頭を支配する。

部室のドアが開き、誰かが中に入ってきた。

最初は部長か誰かが来たんだと思ってた。

でも、そこにいたのは...先輩だった。