「で、どうかしたのかよ?おおかた、桜たちに何かいわれたんだろうが…」
綾音は、何もこたえない。
というより、答えられなかった。
涙がじゃまをして、この人の姿もぼやけている。
あんたなんかに、と。
「あんたなんかに…なにが分かるっていうんですか!」
綾音は、もう誰にでもいいからこの感情を知ってもらいたかった。
ぶつけたかった。
それに、何もしらない、ただたまに会うだけのこの人に根ほり葉ほりきかれることにいらだちを覚えていた。
「わからない。だが、綾音がいつも無理をして笑っていたことくらいは分かる」
「だから、どうしてそんなことがわかるっていうの?ほとんど初対面なのに…っ」
「だって、俺は」
「昔から綾音のことを知っているから」
「…え?」
綾音は、やはりこの人と昔あったことがあるのか、と思った。
「あなた、いったい」
「俺は、藤山健。もうわかるんじゃないかな?…綾ちゃん」
「まさか…健、お兄ちゃん!?」
綾音は、それはもう、ものすごく驚いた。
健お兄ちゃんが、こんなところにいるなんて。
また会えるだなんて。
思ってもみなかったからだ。
