「……ねん。」



「え?」



「何がしたいねんって言ってんねん!」



初めて聞いた光の大きな声に体がびくっと揺れた。



「何やねん、そのピアス。部長のやん。
そんなに部長が好きなん?」



「ちが、」



「せやったら部長と付き合ったらええやん。
別に里乃さんが別れたいんやったら、別れてあげても、「違うって言ってるやんか!」



今度はあたしが大きい声を出す番で。



「光がクラスの女の子と喋ってんの見て良いなぁって思っちゃって…。
光との年齢差は何があっても変わらんって分かってる、けど…。

それに、光はあんまり『好き』とか言葉に出さんし…。

やから、ちょっと不安になっただけやもん!
それを翔太らに相談したら、翔太のピアスつけて光にヤキモチやかせようってなっただけやもん!」



「…。」



「…やから、お願いやから、別れるなんて、言わんといてや…。」



最後の方は涙が溢れてきて声が小さくなってたから光に聞こえてたかは分からん。

でも光はあたしに近づいてきてくれて。



「…俺が泣かせたくないって思うんは、里乃さんだけや。」



そう言った光の手はあたしの涙を拭ってて。



「俺が抱きしめんのも、抱きしめたいと思うんも、里乃さんだけや。」



光に引き寄せられたかと思ったら包まれてたんは光の腕の中で。



光が耳元で囁いた言葉に、あたしはもう一度涙を流すことになる。




「…好きなんは、里乃さんだけや。」