「あっ!」
感想をたくさんの人が言ってくれたあと。
こちらを見つめて動かない男性が一人。
それは新堂さんであった。
「どっ、どうしたんですか!?」
「どうした、じゃない。何故お前はこんな場所で歌を歌っている?」
「質問に答えてくださいよ」
「お前こそ、質問に答えろ」
相変わらず強引だな、と思いつつ、やはりキリがないので
素直に答えることにした。
「路上ライブです。」
「路上ライブ?・・・なんだそれは。」
「なんだって・・・見たまんまですよ」
「だから、それを説明しろと言っている。」
「路上でライブをすることです!」
「ふーん・・・」
なんとも言えない表情をする新堂さん。
それも様になるのがむかつく。
「ところでお前、何故あんなに発音がいいんだ?」
「ふふっ・・・質問ばっかですね」
あたしはギターをハードケースにしまいながら笑う。
「実は高校の時、校内代表でイギリスにホームステイしてたんです。」
「へぇ・・・お前がか。」
「・・・なんですか?」
「人を変質者扱いするお前が。」
「そっ、それは新堂さんが・・・っ」
「なんだ?人のせいにするのか?」
「っ・・・もういいですっ」
あたしはハードケースを担ぎ、アンプを手に持つ。
「ふっ・・・お前はほんと、からかい甲斐があるよ」
「褒めてるんですか?貶してるんですか?」
「さぁな」
二度目の受け答え。
新堂さんは実に穏やかに笑った。

