絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 

 現在フリーの香月は、雑務中心なので自由に店内はもちろん倉庫や駐車場も自由に行き来することができる。パソコン担当の永作と交代しようとも、自分がパソコンを担当できないので絶対に無理なのだが、フリーであれば倉庫も自由に行けるので、依田と会うには、一番現実的な位置だ。
「え、本当に倉庫でいいんですか?」
 倉庫自体を知らない携帯電話販売担当の佐伯は想像をしながら、永作に聞いた。
「倉庫がどんなところか分からないけど、行ってみたいかな……」
「香月先輩、うまく替われないんですか?」
 佐伯は肘をつつきながらニヤニヤこちらを見てくるが、
「えー、宮下店長にどう言おうかなぁ。私がパソコン売れないからな……」
「素直に、倉庫行きたいですって言ったら、いいんじゃないですか? 休みの日とか?」
 佐伯も疑問に思いながら喋っているだけあって、全く考えていないようだが、
「それいいかも」
 永作は素直に目を時めかせた。
「えー!? ままま、待って待って! そんな、それだったらいっそのこと、デート誘おうよ!」
「うんうん、皆でカラオケとか行く時に誘いましょうよ!」
 2人はようやく一番良い方法を思いついたが、
「うーん……それはまだ早いかな」
「早いの意味が分かりませんよ(笑)」
 佐伯は素早く突っ込む。
「もっと、お店で、倉庫でどんなことをしているのか、どんな風なのか知りたいかな」
「あぁ、そっか、確かにねぇ……」
「じゃあ、とりあえず、次の休みの日は、倉庫、と……」
 佐伯はさっそく段取りを立て始める。
「どうする、本当に倉庫行く?」