絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 

 ~♪
 出ようとしたレイジの薄暗い室内で、突然の電子音が鳴り響く。携帯の着信音だ。何の曲なのかは分からない。
 明かりを落としてはあるが、枕のあたりで光っているのがよく分かる。
 とりあえずテーブルの上にでも置き直そうと拾い上げた。そして、驚く。
「レイジさん、レイジさん!!」
思わずゆすり起こした。
「あの、さっきの彼女じゃないですか!? 携帯、優ってな……」
 そういえば、言わなくても着信音で判別できるようにしているのかもしれない。気づいているけど気づいていないふりをしているだけかもしれない。
 だけど、そう考え終わる前に、携帯は手から落ちた。
「……!」
 驚きと痛さのあまり、言葉を失う。
 手首を強く掴まれ、思い切り引っ張られた。拍子に、バランスが崩れて全体重をレイジの上にかけてしまう。
「え」
 言うより先に、レイジの上からずらし落とされ、頭にシーツの感触が分かった。
「ち……」
 ょっとというつもり。
 だけど、それより先に、レイジの唇が口を覆った。
 そのまま、舌も入ってくる。
「んー、んー!!」
 顔を動かそうにも、手で体を振り払おうにも力が足りず、レイジのするがまま、されるがまま。
「ん!?」
 寝ぼけて勘違いしている。そうはっきり分かったのは、指と指の間に指をからませてきたから。
 やめてよ。
「んーーー!!」
「っツ!!」
 なかなか夢から覚めないので、思い切って下唇を噛んでやる。
 さすがに、レイジは顔を離して唇を押さえた。
「……血が出た」