絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 

「皆来るのかなぁ」
「さあ……ジュンイチはどうかな。明日、というか今日から北海道言うてたからさすがに抜けたかも」
「もうとっくに12時回ってますからね」
「けど、元気そうやったわ(笑)。他人の心配できるくらいにはなったんやろ(笑)」
「それもそうですね」
 彼女がグラスを傾ける様をそっと見る。……、やはり、惜しい。
「けど、レイジさんが私の心配なんかしたことないですよ。いつもほとんど会わないし。会ってもそんな話し込むこともないし」
「まあ、あんまり家自体に帰ってないわなあ」
「ユーリさんとは時々新婚生活みたいにご飯食べてますけど(笑)」
「しんこんー?」
「私が思ってるだけかもしれませんけど」
「ユーは、あいつはなんというか……」
 背後で扉が開いたのが気配で分かったので2人同時に振り向いた。
 目立つ男だ……。
「どないしたん(笑)」
 普通に笑いかける。
「はああぁぁぁぁぁ……。寄って」
 彼女と俺の間に立ったかと思うと席を譲れと言い出す。
「なんやな」
 仕方なく隣の席にずれた。
「ユーは?」
「帰った」
「一人で来たんか?」
「そ。バーボン」
 店員にそれだけ飛ばす。
「愛ちゃん」
「はい」
 突然彼女の方に体ごと向いたかと思うと、
「ユキは危ない人だからね。ついていっちゃダメなの」