絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 

 さすがにもうレイジは何も言わなかった。ただ、鋭い視線だけは逸らさない。
「どうも、お邪魔しました」
 リーマンは一歩下がり、障子は静かに閉まった。まるで何事も、なかったかのように。
「……納得、いかない」
 レイジは同じ姿勢のままで続けた。
 多分、思考がうまく回転しなくて、自分でもどうしていいのか分からないのだろう。
 ユーリが一番に立ち上がった。
「まあ、とりあえず落ち着こうや。な?」
「……帰る」
 行くあてもないだろうなあ。そう思った瞬間思い出す。帰るってそうだ、うちじゃん!!
「ほな、帰ろか……」
 ユーリがさりげなくこちらを見てくれたおかげで、
「じゃあ、私も帰ります」って、同じところにだけど。
「悪いけど、タクシー呼んできて」
 ユーリは大変申し訳なさそうにお願いしてくれるので、
「はい」
 と、元気に答えた。
「俺がついていくよ。俺らも、もう帰るし」
「俺も」
 ユキトもジュンイチも腰を上げた。
 3人を室内に2人を置いて店の外に出て、通りまで歩きはじめた。
「……びっくりしました」
「そやろなあ(笑)」
 ユキトは陽気に笑っている。
「噂だけかもしれんけど、あったんよ、前から同じようなことが」
「……そうだったんですか」
 深くは聞けない。
「……何回かね」
 ジュウケンも頷く。
「レイも知ってたんじゃないっすかね」
「その度に問いつめとったようなところはあったけどな。まあ、うまいことはぐらかされ続けたんちゃう? それにしてもまあ、ようこんな式の寸前まで黙っとったわな」
「……それでも、レイジさん、好きだったんですね」
「はまるタイプやからなあ」
「どんぐり並みっすよね」