絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 

 表紙は派手な金髪の女性がきわどい水着姿で写っている。興味本位で中を覗く。モザイクがかかっていないぎりぎりのシーンばかりで思わず、すごい……とつぶやいて見入ってしまう。
「そんな本読むな」
 部屋の外から榊は声をかけてきた。
「あ、いや、何の本かなぁと……」
「捨てるつもりだったんだ」
 ってほんとなんだかどうなんだか、ぽいっとゴミ箱に捨ててみせる。
 おかしくてつい、笑ってしまった。
「何か飲む?」
「ううん、今おなかいっぱいよ。テレビでも見ようか」
「いいけど……」
 彼はリビングに戻ってリモコンでテレビの電源を入れてから答える。
「英語分からないんだろ?」
「あ、そうね……」
「日本語に訳せる映画くらいならあるだろうけど……」
 衛星放送にチャンネルを切り替えるとプログラムを開く。
「じゃあお店が開くまで映画見ようか」
「最近何か見た?」
 画面で、英字は忙しくスライドする。
「ううん、見てないなぁ……。久司は映画とか見る? そんな時間ある?」
「ここに来てからはまだないな」
「最後にどんな映画見たの?」
 それを聞いてどうする……。
「何だったかな……。あ、これは? ラブロマンス」
「うーん、アクションがいいかな」
「じゃぁスピード」
 榊は決定ボタンを押し、一旦書斎に入るとブランケットを取ってきてくれる。
 2人は別々のソファに横になり、足を伸ばしてぼんやりと画面を眺め始めた。
「……愛。寝るならベッド行く?」
 ソファにもたれた時点で寝ることを覚悟していた。さすがに満腹になると睡魔が襲う。
「……テレビ見てる」
「寝てるじゃないか」
「……布団行く」
「寝室はこっちだよ」
 せっかくの早朝映画とブランケットをそのままに、香月は重い足取りで廊下を少し歩いて寝室へ入った。
 もちろんシングルのただのベッド。 
 思い余ってそのまま倒れこむ。
「疲れただろ? 夕方まで寝ればいいよ」
「……久司は?」