聞いたがそれ以上言葉は返ってこなかった。
それから5分もしない間に病院に着き、彼は処置室に運ばれる。その間もずっとそばで見ているだけで用事はない。
そのせいで、さっきの言葉の意味を頭の中でずーっと考えていた。自分でなければ倒れなかったとはどういう意味なのか。
そこに知り合いがいなければ、緊張を崩さなければ倒れなかったという意味か、あるいは、突然追いかけられて驚いて倒れてしまったか……そうではなくて、会って安心してしまったことで、倒れこんでしまった……とか……。
「あなた!!」
背後から飛んできた声に、まるで鈍器で殴られたかのような錯覚を覚える。
「あ、わ、わ、わ……」
妻は必要以上に動揺していた。
榊は酸素マスクの下で軽く目を開ける。
「だ、大丈夫なの!?」
妻が掴む手は白い。
「……」
榊は何も言わずにただ少し顔を動かした。
「あぁ……、先生、よろしくお願いします」
妻は堂々と頭を下げる。
「……あ……」
その相手は今見て気づいた、坂野崎医師であった。
「今頃気づいた?」
相手は患者の容態を軽症とみなしているためであろう、全くナース任せである。
「奥さん、大丈夫ですよ。ただの過労です。点滴して、しばらく寝れば元に戻ります」
もちろん医師はこちらなど見ずに言う。
「あ、あぁ……そうですか……」
妻は聞いてか聞かずか、夫を見つめたまま動かない。
「おーい、点滴したら誰か上まで運んでー」
坂野崎の軽い指示は飛ぶ。
「大変だったね。榊先生と知り合いだったの?」
「え……あ、まあ……」
「あ!」
そこでようやく妻は香月の存在に気づいたようであった。
「まあ、えーっと……ごめんなさい、名前が出てこないけど……」
それも仕方ない。
「香月です」
「あ、そうでしたね……え、2人でいたところで倒れたんですか?」
妻は鋭く勘ぐる。
「いえ、偶然本屋で、遠くから見かけただけです」
「それでここまで付いてきたんですか?」
付いてきた?
それから5分もしない間に病院に着き、彼は処置室に運ばれる。その間もずっとそばで見ているだけで用事はない。
そのせいで、さっきの言葉の意味を頭の中でずーっと考えていた。自分でなければ倒れなかったとはどういう意味なのか。
そこに知り合いがいなければ、緊張を崩さなければ倒れなかったという意味か、あるいは、突然追いかけられて驚いて倒れてしまったか……そうではなくて、会って安心してしまったことで、倒れこんでしまった……とか……。
「あなた!!」
背後から飛んできた声に、まるで鈍器で殴られたかのような錯覚を覚える。
「あ、わ、わ、わ……」
妻は必要以上に動揺していた。
榊は酸素マスクの下で軽く目を開ける。
「だ、大丈夫なの!?」
妻が掴む手は白い。
「……」
榊は何も言わずにただ少し顔を動かした。
「あぁ……、先生、よろしくお願いします」
妻は堂々と頭を下げる。
「……あ……」
その相手は今見て気づいた、坂野崎医師であった。
「今頃気づいた?」
相手は患者の容態を軽症とみなしているためであろう、全くナース任せである。
「奥さん、大丈夫ですよ。ただの過労です。点滴して、しばらく寝れば元に戻ります」
もちろん医師はこちらなど見ずに言う。
「あ、あぁ……そうですか……」
妻は聞いてか聞かずか、夫を見つめたまま動かない。
「おーい、点滴したら誰か上まで運んでー」
坂野崎の軽い指示は飛ぶ。
「大変だったね。榊先生と知り合いだったの?」
「え……あ、まあ……」
「あ!」
そこでようやく妻は香月の存在に気づいたようであった。
「まあ、えーっと……ごめんなさい、名前が出てこないけど……」
それも仕方ない。
「香月です」
「あ、そうでしたね……え、2人でいたところで倒れたんですか?」
妻は鋭く勘ぐる。
「いえ、偶然本屋で、遠くから見かけただけです」
「それでここまで付いてきたんですか?」
付いてきた?

