「多分……」
「……そう。なら……いいけど。じゃあ、気をつけて帰れよ」
「……あの」
「何?」
 車に戻ろうとした宮下は、振り返りもう一度こちらを向く。
「あの、私、いつ、フリーに戻れますか?」
「そうだなぁ……」
 宮下は空を仰いだが、そこには場違いなほどに明るい星がいくつも輝いていて。
「フリーはともかく、レジと倉庫はどっちがいい?」
 まさか質問されるとは思っていなかったので、
「……どっちでも好きな方に行けるんですか?」
「場合によっては」
「……いえ、……どっちでも」
「……できれば、レジの方がいいがな。香月は戦力になるから」
「そうですか?」
 香月は訴えるような瞳で見上げる。
「ああ。そうだけど、今はどうかな……。フリーで動くようにしてもいいが……。そろそろ忙しくもなるしな……」
「販売できるようになったら、もっと違うでしょうか?」
「何が?」
「何が……というわけではないけど……」
「もっと、専属の場所が欲しい?」
「いえ、そういうわけでは……」
「うん……。少し、考えてみるよ。他店とか、本社への希望は?」
「……できることなら、行きたくありません」
「うん、そう言うだろうと思った」
「……私、もう少し、休んだ方がいいのかな……」
「何を突然」
 香月は額を手で押さえながら俯く。
 宮下は少ししゃがんで窓の中を覗いた。
「香月……。どうした?」
 精一杯優しく話しかけてくれているが、返事はできない。
 香月はその流れる涙を隠しもせず、ただ、俯いていた。
「……全然、うまくいかない……」