絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 

 自宅に戻ると、すぐに2人はアテ作りを開始する。ユーリの手際よさがあって、野菜炒めと麻婆豆腐は、ものの10分で手早く完了した。
 さあ、リビングのテーブルに店を広げて、いざ飲み会。
「うわー」
 瓶を包んでいる和紙を剥ぎながら、早くも香月は声をあげた。
「えっ、どしたん? まだ飲んでへんで(笑)」
「これが美味しかったら最高だね」
「美味しいよ。俺的にはね」
 ユーリは封を開けると、湯呑にとくとくと注ぎ始める。
「で……お湯を半分くらい入れて……」
「この暑いのに?」
「これはね、お湯の方が美味しいのよ」
「ふーん……」
 指示通り、湯のみの中に、酒半分、湯半分を注ぐ。
「よし、じゃあ、頂きます」
「いただきます」
「……」
「どう?」
「……カーーーーー!!!」
「あ、やっぱあかんかった?」
 笑いながらユーリは言うが、顔というか喉というか、とにかく、熱い!!
「うわー……」
「ドン引きやね(笑)」
「まずい!!」
「もいっぱーい!」
「いやー……ガツンとくるって……」
「そゆこと」
「そーゆーことなのねー……」
 香月の手は湯呑からすでに、水が入ったコップに変わっていた。
「あ、そや。これがある」
 と何やら、ユーリが突然自室から取り出してきたのは、また同じような瓶。
「これならいけるよ」
「軽い?」
「うん。わりに、よく酔える」
「ふーん」
 またこれも外の包装を破いて、いざ出陣。
「うーん……さっきよりは……まし?」
「これ高いねんでー。20000円!!」
「……ふーん」
「ふーんて」
「まずいから、一気で飲もう」
「まずいんだってら飲まんといてんかー!!」