絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 

「俺はちょっと前からその話聞いてて、で、まあこう……手を出すなよ、と」
「今更じゃんねー。というか、もともと多少好きだからこの生活誘ってきたんだと思ってたんですけど?」
「いやー、まあ、あのー、前の彼女とはもういかんと思ってたみたいやし、せやけど、愛ちゃん誘ったんは元々は恋人目当てというよりは、人間性を重視してのことやで?」
「けど最初は好きになってもいいからみたいなこと言ってましたけど?」
「……本音?」
 それって最悪すぎません?
「なあんかさあ、それ考えると、次々女変えてる芸能人としか思えませんよねえ」
 ユーリは腕を組んで唸る。
「いやー……。けど、好きになったら待たんタイプやし、あれちゃう? 手探りしとったんちゃう?(笑)」
「意外ですね……。なんかそんな風には思えなかったから」
「まあ、でもこれからも一緒に住んでいかないかんし……ねえ?」
「……」
 香月は、ため息をついて、俯いた。
「で、ルームシェアやめるって言うてんねやろ?」
「え、いや待って!! 私、決めたわけじゃないんです!」
「……フるの?」
「えー、何ですか、その言い方……」
「いやだってそうやん!」
 ユーリは両手で頭を抱える。
「そんな……だって私、レイジさんのことあんまり知らないし。なんか浮気人っぽいし」
「その、ルームシェアのくだりは、最初に愛ちゃん薦めたん俺やから。それに同意しただけも当然なんよ?」
 その言い回しもどうかと思う。
「その、あんまり知らんとか言うてるけど、これから知るのよ!」
「あんな……煌びやかな人ってなんか落ち着かないだろうなぁ」
「慣れる慣れる」
「芸能人ってもっと綺麗な女の人もいるし……」
「あ、それは間違い」
「何で?」
「あれよ、テレビとか雑誌ってほんま綺麗に写してるけどね、実際近くでいたらそうでもないんよ。普通の人」
「……うーん……」