「もー、だいっきらい!」
ケーキを選ぶ繊細な指差し方で右の下瞼をホッペへ引っ張り、
眉毛を一本にする力で寄せ、今時クソガキでもやらないアッカンベーを田上さんがするもんだから、
さすがに引いて、「今度は不思議ちゃんアピールかよ? 可愛くないし」と一応突っ込んでやる。
「っ、て!」
そう、これは茶番だ。
その証拠に機嫌を損ねた彼女が意地悪な彼氏の靴を踏んできやがった。
つまらない流れだけど嬉しい。
だって、田上さんは俺が今日恋に意気込んだと知ってるんだ。
そう、彼女は彼氏のブーツが新品なのだと感づいてるからこそ、
傷が残らない程度に調整してくれたのだと思われ、言葉にしなかろうが好きの気持ちは伝わってる関係が喜ばしい。
「痛ぇよ骨折した最低慰謝料払え雪だるま」
痛くないのに少年は痛がってみて、怒ってないのに少女は怒ってみせる。
こんな風に馬鹿馬鹿しいノリが通じる人って、
私服姿とか自分ネイルとか手作りパンとか愛犬とかポーチの中身とかスッピンとかの写メをSNSにアップしたがったり、
遊んだ子とのプリクラをブログに載せ、その子の良いところの能書きを垂れ、
褒めまくって親友と綴りたがる華やかな同年代の女子には少ないから、
俺の彼女は非常に貴重なダサイ人材なんだ。
リアルのやりとりをネット空間じゃなくて、
アナログの目前でしか体感できない古臭い子だから慕ってるんだ。



