「なるほど……あくまで被害者の要望がないとカウンセリングは行えない規約になっています。もし、何か心配な事があったらご相談ください」


執事は「もちろんです」と大きく頷き、私の背中を軽く叩く。



「さあ、お嬢様。屋敷に戻りましょう」


「ええ、帰るわ」



コブタちゃんには申し訳ないけど、もうここにはいたくない。



「お嬢様、ご気分はいかがですか?」

執事が、さっきから珍しく優しいわね。
紳士的に右手を差し出し、左手は後ろに組む。



「最悪よ」

その右手を取ると、執事は出口に向かって歩き出す。



出口で心配そうにしていたイケメンテロリストの津田さん。

執事は、彼には目もくれずに「……お嬢様をこれ以上、あの事件に関わらせたくない」冷たくそう言い放つと、答えを待たずにその前を通過する。

津田さんは警官みたいに右手を額にあてて敬礼をして私達を見送ってくれていた。