最前列のお父様とセルマン先生も満足そうな笑顔。


私がステージを降りると、今度は合唱部が出番らしくステージ脇には、ピラピラした衣装の生徒達が沢山いる。


「紫音代表! 素晴らしい演奏でした!」 と何人もの生徒が涙ぐみながら声をかけてくれたけど……素晴らしいのはお母様よ。


私一人の演奏なら、こんな声援は確実にもらえない……




「茉莉果、上手だったわよ!」

「お母様こそ、私に合わせるの大変だったでしょ?」

「本当よ! 二部から三部にうつるのに、一拍余分にためたでしょ? ありえないわ!」


うっ……
あそこは一瞬何の音かわからなくなって、ためたくてためたのではない。


「でもソレも良かったわよ。適当に弾いてたり、途中で一段飛ばしたり……茉莉果らしくて楽しかったわ」


お母様は手を拡げると、私を抱き寄せる。


悔しいけど私がお留守番な意味を、ちょっと理解できてしまうんだ。


お父様もお母様もすごい。
人の心を動かす音楽ができるんだもの。