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紀一さんだ。
紀一さんが、いる。

そう思ったら、涙が止まらなかった。

「さくら。」

優しい声で髪を撫でられた。

言いたいことが沢山あって
私の口からは沢山の言葉が溢れたはずだけど、何を言ったかは覚えていない。

ただ何度も、一人にしないで、死なないでということを伝えた気がする。

紀一さんを支えてあげたいと思っていたのに、なんでか、うまくいかない。

紀一さんは、優しい表情で、何度も頷いてくれた。

「ずっと、一緒にいてくれたのか。」

ただ頷く。

「心配をかけた。
もう死なない。君を一人にしない。
…一緒に生きよう。」

それを聞いたらさらに泣けてきた。
もう、しばらくは止まりそうになくて、
初めて、自分から紀一さんに抱きついた。