私は、その男に突然手を離され、知らない中年の男の手に掴まれた。 さっきまで自分に笑いかけていた男は、今自分の手を掴んでいる男から貰った金を見て、ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべている。 状況がよくわかっていない自分を、その男が再び見ることはなかった。 男が私に背を向けた時に、私は悟った。 (置いていかれる……) それから私は、泣き叫ぶ。 行かないで おいていかないで いい子にするから 殴ってもいいから ひとりにしないで お願い、行かないで ……オトウサン……