──ギギィ…。
重い木の門が開き、忠純の乗った馬を先頭に、輿入れ行列が出発する。
ガシャガシャという鎧と、出発を現す法螺貝の音により、忠純は自分がそこにいることに気付いた。
周りに悟られないよう、ちらちらと辺りを見渡すと、住み慣れた岩佐の風景が広がっていた。
そして、自ら厳選した、柚姫の駕籠も。
──そうか。
儂は、柚姫様のお輿入れの行列の先頭を任されておったのだった。
徐々に頭が働き出し、状況を理解してきた。
下に目を向けると、杉松家伝来の赤糸縅紅葉紋二枚胴具足が。
──儂も、幸せ者よの。
だが…。
ついに、お別れを告げる事、出来なんだな。
忠純は込み上げる涙をこらえながら、真っすぐ守槻城へ馬を向けた。