「忠純!」
柚姫は、綺麗な唐紅の打掛姿で立っていた。
レオを見て、花開くように笑う柚姫。
レオは柚姫の側に寄り、ひざまづく。
「お綺麗でございます。」
「なっ、何を申す!
たわけた事を…」
レオがさらりと言った言葉に、柚姫が身に纏っている着物のように真っ赤になる。
「忠純。
これより、守槻城に参る。
そなたとも、これでさらばじゃ。
………。」
急に、柚姫の言葉が続かなくなった。
レオはそっと柚姫を見上げる。
柚姫は……、涙を一筋、その大きな瞳から落としていた。
「柚、姫、様…」
思わず名を呼んでしまう。
「忠純、私は家のため、国のために、嫁に参る。
それはすなわち、そなたのため。
国に仕えてくれている、そなたたち家臣、民のためよ…。
……忠純、さらばじゃ。
そなたが守役で、私は本当に幸せであった。」
柚姫は、涙を止めることなく続けた。
そして、柚姫は歩き出す。
「行くぞ、忠純
守槻城へ!」
「はっ。」
柚姫の凛とした背を追い、城の入り口へ。
そこには、柚姫用の駕籠が控えていた。
柚姫は躊躇うことなく、駕籠に乗る。
それを見届けたレオは、忠純用の先頭の馬に跨がった。
その時。
レオの体に、電流の走ったような感覚が走った。