「それは、貴女様の本心ですか?」


レオには、なんとなく伝わっていた。


柚姫が、何か堪えているのを。


儚い雪のような柚姫。


桑姫と正反対で、己を主張せず、ただ他人を思いやれる、姫。


そんな姫の言葉に、レオは胸が締め付けられた。


飾り紐を手にとり、綺麗に結いあげると、レオはそっと、鏡に映った柚姫を見た。


──…っ。


柚姫は、静かに涙を流していた。


レオも言葉を発しない。


ただ、静寂に包まれる。


その静けさを破ったのは、柚姫だった。


「……嫌じゃ。
本当は、嫌なのじゃ。
そなたには…。
忠純にだけは、私だけの忠純でいて欲しい!
何人もいた守役たちは、今は皆、桑姫の守役じゃ。
されど、忠純、そなただけは、私だけの忠純でいて欲しいのじゃ…っ!」


柚姫の涙が、鏡を濡らした。