「忠純…」


柚姫は、静かに、レオに話しかけた。


「義母上の…、五条の御方様のところに呼ばれたと聞いた。」


レオは手を止めることなく、柚姫の言葉を受け止める。


「私は、構わぬ。
そなたが、桑姫の守役として就くことを…。
桑姫は、皆、私と同じでなければ嫌なのじゃ。
着物も、部屋も、紅も、…侍女も、家臣も。
それに、守槻の若殿様の奥になる私に、止めることなどかなわぬ。」


柚姫は、最後に自嘲的に笑った。


レオは櫛を置き、言葉を返した。


「それは、貴女様の御望みの事ではありませんね。」


「…いや。
桑姫は、多少気性は荒いが、私の妹。
そなたであれば、何も案ずる事などない。」


「あの方が、私を男として見ても、ですか?」


「……。」


レオは黒元結を手にとり、髪を束ね始めた。


櫛で梳かしたことで、元々さらさらだった黒髪がさらに艶を増している。


「……良い。
そなたが、幸せであれば。」