柚姫の前に腰を下ろし、頭を下げる。
柔軟な性格のレオは、すっかり礼儀を覚えていた。
「よう、来てくれたの。
…忠純。
面を上げてくりや。」
レオは柚姫の言葉に素直に従い、頭を上げる。
「遅くなってしまい、申し訳ありません。」
「良いのじゃ。
こうして来てくれただけで、私は嬉しい。」
柚姫はふんわりと笑いながら、けれど少し哀しそうに言った。
さすがのレオも、少し胸が痛い。
「それに、まだ酉の刻になったばかり(午後5時過ぎくらい)じゃ。
時間はまだある。」
そう言って笑う柚姫に、少し安心する。
あの桑姫と、半分とは言え血が繋がっているとは思えない程、柚姫は穏やかだ。
柚姫はレオを側に来るように促し、自ら鏡と櫛を用意してくれた。
鏡に向かって柚姫が座り、その後ろにレオが膝をたてた。
飾り用の結い紐を解き、黒元結も解く。
その洗練された動作は、あまりにも美しい。
レオは柚姫から櫛を受け取り、髪を梳かし始めた。


