しばらく話をした後で、柚姫は寂しそうに呟いた。
「忠純、そなたはまた、稽古に戻るのか?」
「…ええ、そのつもりです。」
「…今宵の事、約束じゃぞ!
絶対、絶対じゃからな!」
顔を林檎のように真っ赤にして叫ぶ姫。
レオはそんな柚姫がつい可愛くて、
「では、これで失礼します。」
と、貴婦人への礼節を取るという建前のもとで、柚姫の手をとって手の甲に軽く口づけた。
そしてそのまま部屋から退出する。
柚姫は、男にこんな事をされるのは初めてで、まして相手は大好きな忠純である。
忠純の中身が、こういう事をするのが日常茶飯事の騎士レオナルド・ジルファースとは知る由もなく、
驚きと嬉しさと、恥ずかしさ…
いろいろな感情が立ち込めて、元々赤く染めていた頬をさらに真っ赤にするのだった。


