食堂は、昼食を食べに来た騎士達でごった返していた。


この時間に、警護やらの番についている者を除いても、かなりの人数だ。


「あーあ。
席、空いてるかわからんぞ。」


「…面目ない。」


ロナウドは爺さん達の使うような言葉に苦笑しつつ、一緒に配膳口に向かう。


配膳口で食事を受け取ると、ラッキーなことに丁度二人席が空いたところだった。


席につくと、ロナウドは早速食事を始めた。


──昼に食事など、奇怪な…。


基本的に昼食を取らない忠純には、異なる習慣に戸惑いながら、一度合掌して、スプーンを手にとる。


そんな忠純の謎の行動に、ロナウドは最早失笑。


今日のメニューは、ピラフとサラダ、ソーセージに野菜のスープ。


どれも見たことのない食べ物で、食器もスプーンならまだしもフォークやナイフを使った事などあるはずもなく。


ロナウドが使っているのを真似して、なんとか食事をする。


──見た目は珍妙だが、意外と美味いものだな。


食事をしながら、忠純はここがどこなのか、これからどうするのか考える。


人々の見た目は、前にお殿様の遣いで行った尾張國で見た、伴天連の宣教師とやらに幾許か似ている。


騎士が身につけている鎧も、南蛮もののようだ。


とりあえず、どこか南蛮の国に飛ばされたと思い込むことにした。


あの魔女はしばらくしたら元に戻すと言ってはいたが…。


それまでは、怪しまれないようにやり過ごすしかないのか。


忠純は大きなため息をついて、食事を続けた。


食事を終えると、返却口に食器を戻して、訓練場に帰る。


まだ休憩時間なのか、鎧を身につけた騎士達は思い思いにくつろいでいた。


中には、午前中にいなかった者もちらほら。


忠純は腰の剣を抜いて、じっと観察する。


──両刃の直刀か…。


戻るまでは、こいつを振るわなくてはならないと思うだけで気が滅入る。


本日何度目かわからないため息をついた。