カエルと魔女の花嫁探し

 ――口端を上げて、「今よ」と声を出さず唇だけ動かす。

 悪魔の体が一瞬にして強張った。

「な、なんだと……?」

 震える手で悪魔は首の後ろをさする。
 今度は悪魔の顔が青ざめた。

「銀の針……! どうやって私に打ち込んだ?!」

 セレネーはなにも答えず、悪魔の手を振りほどいて後ずさる。
 ピョンッ。肩にカエルが飛び乗る感触があった。

「これで良かったですか、セレネーさん?」

 流し目でカエル見ると、セレネーは「上出来よ、王子」と囁いた。

 悪魔は銀を恐れ、聖水は彼らの体にとっては毒となる。
 だから自分が囮になっている隙に、密かに悪魔の後ろへカエルを回り込ませ、聖水を塗った銀の針を刺してもらったのだ。

 あとは悪魔を封印するだけ。
 セレネーはにっこり笑って、ポケットから獣皮紙らしき巻物を取り出す。

 そして腰に挿していた杖を手にして、先端を悪魔に向けた。