悪魔に気に入られたとなれば厄介だ。
 彼らは一度気に入ったものを手に入れるまで、あらゆる手を使って執拗に狙い続ける。
 下手すれば標的が死んだ後でも、その魂を手に入れようとしてくる。

(小さな部屋から一生出られないなんて……これは放っておけないわ)

 セレネーは胸を叩いて「アタシに任せて」と言い切った。

「アタシが悪魔を退治してあげる。見返りはいらないけど、部屋から出られるようになったらフレデリカさんに会わせてくれるかしら?」

 女は少し泣き出しそうな目をして、「ええ、もちろんです」と小さく微笑んだ。




 夜になってセレネーはホウキへ乗り、上空で悪魔が現れるのを待った。

「あ、あの、セレネーさん……」

 肩の上からおずおずとカエルが尋ねた。

「悪魔は力も魔力も、人間を上回ると聞いています。そんな悪魔に戦いを挑むなんて……ああ、私が人間の姿であれば、セレネーさんに代わって戦えるのに」

 不安と心配が入り交じったか細い声に、セレネーはあっけらかんと答える。

「人が悪魔に正面から戦って勝つなんて、絶対に無理ね。まともに戦ってたら、命がいくつあっても足らないわ」

「えええっ! じゃあ、どうするんですか?」

「真っ当に戦わなきゃいいのよ。それにアイツらはね、骨の髄まで強欲で貪欲なの。要は執着心が強い知りたがりってところかしら。それを利用してやるのよ」