カーテン越しに朝日の和らいだ光をまぶたに感じ、セレネーは目を覚ました。
 ゆっくり起き上がって辺りを見渡し、カエルが枕元で眠っているのを確かめて安堵する。

 ふと、部屋に備え付けてあった机に目をやると――。
 ――そこには一輪の白い花が、水を張った小さなお皿の上に活けてあった。

(アタシ、活けた覚えないわよ。ってことは、これ王子が……)

 人が眠っている間に窓から外へ出て、わざわざこの花を摘んで来たのだろう。
 今の自分にできる、精一杯のお礼をしようと思って。

 そんな事が、当たり前のようにできる人なのだ。

 セレネーは柔らかな微笑みを浮かべ、しばらく寝ているカエルを見つめていた。