ほんの僅かにカエルがうなずく。
 その動きを手で感じると、セレネーはカエルから手を離し、体を再びベッドへ横たえた。

 少し間を置いてから、カエルは声を震わせながら「ありがとうございます」とつぶやいた。

「私が人間に戻ったら、今度はセレネーさんの願いを私に叶えさせて下さい。どんな願いでも必ず叶えてみせますから」

「アタシの願いはただひとつ、王子の笑顔が見たい。それだけよ。他にはなんにもいらないわ」

 見返りが欲しくて助けている訳ではない。
 ただ、苦しんでいる人がずっと苦しみ続けるのだと思うと、居ても立ってもいられなくなる。そういう性分なのだ。

 急に眠気が訪れ、セレネーはあくびをする。もう少し話したかったが、眠くて仕方なかったので「おやすみ」と一言伝えて布団の中へと潜り込んだ。