「…もう…っ」
誰にも聞こえないくらいの声で、そう呟いた。
少し前を歩く、凌の背中を見つめながら。
…今が夜でよかった。
赤くなった顔は、凌にはばれてないよね?
「お前らおそいーぞーっ」
既に波打ち際にいる章太が、波の音に負けないほど大きな声で叫ぶ。
「…風邪ひくぞバカー!
あ、だからひかねぇのか」
そう言いながら凌も、近くに荷物を下ろして、制服の裾をまくりあげながら、走り出した。
「紗奈もおいで、キレーよーう♪」
同じく波打ち際にいる愛子が手招きをする。
靴を置いて、ハイソックスを脱いで、あたしも走った。
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