あの数週間は夢だったのではないのか、と近頃考えるようになった。 天使なんて馬鹿らしい。この世界は人が支配しているのだ。人しかいないはずだ。 そうやって思い込み、楽しくも辛くもあった記憶を封じようとしている。 だが、手元に残った思い出の品々がそうさせてくれない。 あれは現実だ、と訴えかけてくる。 不思議なことにだれも彼のことを覚えていなかった。記憶を消したのだ、と即座に分かった。 だったらなぜ私のも消していかないのか。考える間もなく理解した。 私の幸せはあの日々すべてだから。