ある日の休み時間―――



あたしは次の授業が特別教室だったため、友達と移動していた。

移動途中にD組の前を通り、あたしは李玖を見つけた。


「あっ! り…く…」


いつものように声をかけようと思ったが、目の前の状況が信じられなくて、声が小さくなる。


李玖が女の子と笑顔で話している。

その女の子は誰が見ても可愛くて、その子の目は恋する瞳だった。



私が立ち止まってることに気付いた友達が話しかけてくるが、


「杏樹? どうしたの?」


「ううん…。何でも…ないよ」


上手く表情が作れたか分からない。

ありがたいことに友達はスルーしてくれたが、あたしはその日は1日中、上の空だった。