しばらく泣いていた綾香を美鈴から引き剥がすと、カウンター席に座るようにと『ママ』に進められ、俺達はそれに従った
目の前には美鈴が立っていて
『ママ』も少し離れたところに腰を下ろすと俺達の様子を静かに伺っていた
そして
最初に口を開いたのは綾香だった
「美鈴…どうして黙っていなくなったの?」
綾香はまだ涙のたまっている瞳にハンカチを当てながら、もう一方の手を机に置かれていた美鈴の手に重ねた
そんな綾香の手を握り返しながら美鈴は口元に密かな笑みを浮かべた
「ごめんね…迷惑かけて…」
その答えになっていない言葉に、再び聞き返すことは俺も綾香もしなかった
希美から美鈴のことを聞いて、出て行った理由はだいたい想像が付いていた
父親と出て行ったと言うことも…
俺は三池と出ていった訳ではないことにホッとしていた…
けれど今は一緒にいる…
聞きたいけれど聞きたくはない…
そんな複雑な気持ちで俺は、4年ぶりに美鈴に話しかけていた



