「ママ…ごめんね、その人達は私の知り合い」
そんな声が聞こえて俺の胸がドキンと大きな音をたてる
高くて澄んだ懐かしいその声…
「いいの…?」
『ママ』と呼ばれたその女性は、カーテンで遮られた奥の扉に向かってそう呟いた
するとカーテンがスッと引かれる…
その途端、俺の後ろにいた綾香が突然走り出して
そのカーテンから現れた人物に勢いよく抱きついていた
「……美鈴!美鈴…!っヒック…心配…ヒック…したんだから…!」
綾香の声にならない呟きは、泣き声とともに静かな店内に響きわたる
その泣きじゃくる、綾香の肩を抱き返しているのは
間違いなく、あの日あの海で会った変わってしまった美鈴で
俺はそんな美鈴を見て、また自分の胸が熱くなっていくのを感じた



