────その瞬間
突然の強い風が目の前を通り抜ける
──────────────────────────────ブワッ………‥‥‥!!!
「……っ…」
少し砂が舞い上がって、とっさに手で目の辺りを覆った
勢いよく吹き付ける風に、Tシャツとズボンが体に張り付く
「あ……っ!」
そんな声が前方から聞こえて、薄目で少し離れた場所に立っていた女性の方に目をやると
日傘が風にあおられて道路の向こう側に飛ばされていた
彼女はその日傘が飛ばされていく方向に、顔だを向けて目で追っている
栗色のウェーブがかった長い髪が風に吹かれて、彼女の顔を隠し続けていた
そしてやがて強い風は弱まり
嘘のようにピタリとその勢いを止めた
何もかもを静止させるように
静かに目の前の彼女の顔があけていく
それと同時に俺も視界をはっきりと取り戻し始めていた
ドキンッ────────────────…………‥‥‥



