俺は美鈴を諦めていない
だから俺を待つなんてことはしないでほしい
いつ帰ってくるかも分からない女の残像を追い求めてさ迷っている、こんな男と一緒に破滅みたいな道に進まないで
もっと緩やかで楽しい道を綾香には進んで欲しい
「綾香…」
「あーもういいから!わかった!わかってるから今日は今日を楽しもう?」
ハンドルを握る綾香の手が少し震えている
「ごめんな…楽しもうな」
俺は綾香の頭をポンポンっと撫でてまた外に視線を移した
カーステレオから夏の音楽が聞こえてくる
そのメロディーだけが2人の沈黙を埋めるように流れていた



