「あの日、彼とケンカしちゃって…
ムシャクシャしてどうしようもなくて、やっぱりこの海まで来てたの」
沙羅さんの視線は相変わらず海を見据えていて、俺もそれに習って海を眺めながら沙羅さんの話しに静かに耳を傾けていた
潮風が頬を撫でる
やっぱりこの海は他の海とは少し違う気がした
「ここって不思議と落ち着くのよね
もちろん地元って言うのもあるけど…」
沙羅さんが自分の考えていることと同じセリフを言ったので俺はフッと笑って頷いた
「その日は暦の上ではもう春だったけれどまだまだ寒くて、手なんか凍えそうに冷たくて」
さっきの俺が見た夢みたいだ…
「私は車を止めて…
っと言っても、もちろんこの車じゃなわよ?
ホロがあっても寒い日には乗ってられないわ
…まあそれで、いつも行く自分の指定席に向かったの
ちょうどそこの少し高いガードレールが途切れてる…」
沙羅さんが指差す方向を見ると、そこはあの日美鈴が立っていた場所
「でもそこには驚くほど薄着の先客がいたわ」
きっとそれが美鈴なんだろう
「あんなひどい顔をした女の子…初めて見た
何もかもに絶望したような…」
俺はその話を聞きながら、再会した日のことを思い出していた
ガラス玉みたいな…
うつろな瞳
表情のない悲しい美鈴の顔を



