「何か悩み事があるなら話してごらんよ。僕は頼りないけど、話くらい聞くよ」


「はい。でも……ここじゃ……ちょっと……」


「じゃあ、場所を変えようか? 人に聞かれたくないよね? 二人きりでゆっくり話せる場所がいいね。今度、レストランを予約するよ。それで、いい?」


「レストランですか?」


「うん。いつ空いてる? 来週あたり、どう?」


「ゴールデンウィークですね。いつでも空いてますよ。でも、ゴールデンウィークでも予約取れるんですか?」


「編集者だから顔が利くんだよ。大丈夫」


「それじゃ、遠藤さんにお任せします」


「子供の日はどう?」


「かまいませんよ」


「じゃあ、汐留にあるスターロードビルの最上階で待ち合わせしよう」


「そこ行ったことないけど、知ってます」


「フレンチレストランがあるんだけど、知ってる?」


「いいえ。そこ行くんですか?」


「うん。夜景がキレイなんだ。フレンチは嫌い?」


「そんな! とんでもない! 嬉しい……」


思わず、私は叫んで口元を両手で押さえた。


「じゃ、夜7時にそこでね」


そう言い残すと、遠藤さんは仲間のいるテーブルの方へ戻っていった。


話の流れで、食事の約束を取り付けてしまった。


こうして彼氏のことを相談という名目で、私と遠藤さんはデートすることになった。