「まあ、そんな力まないで。教えてあげるから」


「本当ですか!?」


「ああ。その代わり、約束してくれるかい?」


そろりそろりと立ち上がると、また誘惑するような流し目で私を見た。


教えてくれるなら、どんな条件も呑む。


抑えきれないほど激しい勢いでこう尋ねる。


「約束って何ですか?」


「自殺しないって」


「どういうことです?」


「現実を知れば、あんた傷つくよ」


どんなに傷ついてもかまわない。


もう覚悟はできている。


現実なんか恐くない。


私は現実を恐れない。


「死にません。傷ついても死んだりしない」


「そっ。なら、教えてあげるよ。明日の朝、逗子へ行こう」


「逗子へ?」


「そっ。行けば、すべてわかるよ」


「葵の実家があるとこでしょ?」


「ああ。そうだよ。知ってるじゃないか」