「今日は一品だけ?」


「そんなわけないから。とりのさつま汁、わかめと貝われ菜の酢のものも作ってあります」


「薫は何でも作るなあ。お料理名人だなあ」


そう誉められると、なんだか照れる。


「もう渡そうかなあ。午前0時になったら渡そうと思ってたんだけど」


そう言って葵が黒いビジネスバッグから何やら取り出す。


それは、黒い四角い箱だった。


「はい、これ。お誕生日おめでとう」


私は箱を渡されたので、さっそく中を開けてみることにした。


ケーキ以外に誕生日プレゼントまで用意してくれてたんだ。


この上ない幸せを噛み締める。


箱から出てきたのは、ピンクメタリック色のレザーでできた丸型ジュエリーケースだった。


ケースを開けると、ピンクダイヤモンドの指輪が入っていた。


キレイな丸い形をした可愛らしい輝きを放つダイヤだった。


こんな高価なリングを私風情がもらってもいいんだろうか?


葵は、女の子のハートをわしづかみするような素敵なプレゼントを選んでくれた。


プレゼント選びのセンスまでいい。


どこまでも完璧な男性だ。


「ありがとう。でも、高校生の私にはもったいないくらいの品物だよ。高かったでしょ?」


「ははは。値段のことは気にしないで。たしかにピンクダイヤは高いんだ。でも、君が大切だから」