「……なんですか、これ。
呪いの人形?」



レインは自身の主人の書斎に飾られた不気味な(飽く迄彼女の感想)人形を見て眉間に皺を寄せた。



「違いますよー雛人形です!
日本では3月3日に女の子がいる家で飾る人形だそうですよ」


「ここは日本ではありませんが」



飾った張本人、副官アルファは得意気に胸を張る。


女の子がいる家――…すなわち、書斎に出入りする女の子が自分しか見当たらないわけだから自分のために持ってきたんであろうが。



「無駄に大きいし邪魔ですから片付けますよ」



「ああーっ、こら、動かすなぁ!」



一段目しかない雛人形は、あっさりレインの力で持ち上げられる重さである。

だからこそアルファが選んだわけだが、レインには気に入らないらしい。



そもそも主の書斎なのだ。


秘書官たる彼女が僅かながらに憤慨するのは当然である。