「逃げた……」


「は?」


力無く呟くと、智恵が怪訝な顔をした。


「だから……髪触られて……パニックになって……逃げた……」


あの後――。


勢いよく立ち上がったあたしは、香坂君を置いて教室を飛び出してしまった。


そして終業式だった一昨日は、彼に会うのが気まずくてギリギリに登校した。


もちろん担任に促されて体育館に移動する時も、終業式が終わって教室に戻る時も智恵を引きずるように行動し、必死で香坂君の事を避け続けた――。