私はいまだにナフィに瞳の色を教えることができなかった。
水面に映った瞳の色を教えてくれればいい、とナフィは言ったが、私は自分の瞳の色をなんと言うのか知らなかった。
他の精霊の森の民とは明らかに違う色なのは知っていた。
何と似ているかも知っている。
だけどそれは時と共に色を変えていくものだったから、やっぱり説明することはできなかった。

新月の邂逅のとき、あたりはいつも静かだった。
風の音で声が響くようなことはなかったが、それでもちょっと大声を出せば、誰かが不審に思って起きだしてくるほどには風は私達の声を隠してはくれなかった。
一度、誰かがナフィの部屋を訪ねてきて以来、私は木の上で、ナフィを抱き、囁くように歌うことが多くなった。
ナフィにだけ歌う歌に、ナフィはとても気に入ったようで、毎回私に歌うように催促してきた。