「ゆき姉ちゃん」 美紀はそう呼んで慕っていた。 俺と同じ歳で、本当に雪のように白い肌に、滑らかな黒髪を凛と束ねた、日本美人といった感じの女性だった。 彼女は家は貧しかったが、 ものすごい才能を先生に認められて 庶民では通えない、ほんの一握りの身分の子どもが参加するピアノ教室に 特待生として授業料免除で参加していた。 俺は、その教室で彼女を見るなり一目惚れをして 大して好きでもないピアノ教室に通い続けていた。